1984年
『パーク・アベニューの孤独』(角川書店・角川文庫)
ニューヨーク・シティ体験をベースに『野性時代』に連載したドラッグ小説。と言うか、恋愛小説だ。東京が舞台の『壜の中のメッセージ』、そしてこの『パーク・アベニューの孤独』、それからジャマイカを舞台にした『星とレゲエの島』、アフリカを描いた『ママ・アフリカ』とつづく小説の主人公は、きっとぼく自身にいちばん近い存在なのだろうと思う。ストーリィも、だいたいぼくの身の回りで起こったことが素材になっているから、読み返すとなんだか懐かしい。もう一人のぼくというか、あの時代の自分の分身が、そこでは今もトボけた顔をして笑っている。
『バイクフリークたちの午後』(講談社・講談社文庫)
当時『ベスト・バイク』というオートバイ雑誌あり、そこでいろいろなオートバイ乗りにインタビューしたのを一冊にまとめたもの。その頃、師匠の五木寛之氏に「しかし、午後なんてつけるのはキザだよな」と言われてしまった。そうかな?
『サンタのいる空』(中央公論社・角川文庫)
この頃ぼくは『群像』や『文芸』や『すばる』『海』など、いわゆる文芸雑誌と言われる雑誌によく短編を書いていた。発表された雑誌の性格に引き摺られているのか、それとも当時のぼくの心境がそうだったのか、この短編集におさめられたひとつひとつの短編は文学度(ぼくが勝手に作った言葉だ)が高い。つまり、どことなく日本文学している。この本は何度かFMドラマになった。「鋼のように、ガラスのように」は射殺されたジョン・レノンに捧げたレクイエムである。
『綺羅星』(河出書房新社・集英社文庫)
『サンタのいる空』と同じ時期に書かれた中・短編を振り分けた。だからこの二冊の本は兄弟みたいなものだ。表題作の「綺羅星」に登場する画家は、マイルス・デイヴィスなど、ぼくが敬愛する表現者をミックスして造り上げた人物像である。「月夜野の風」はXJというオートバイでツーリングにいった時に知り合った年配の女性とのエピソードを小説にしたもので、ある人に「泉鏡花みたいだ」とほめられた時はうれしかった。
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